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眠ったことで体力が回復したのか、話をすることが出来そうだ。
「ユリ・・・気分は、どう?」
「大丈夫・・・。」
「ん、良かった。」
「今・・・何時ですか?」
「もうすぐ12時だよ。」
「大変、帰らないと・・・洋一さん、明日お仕事でしょ?」
「・・・そんなこと、気にするな。」
「・・・・・。」
「さっき看護師さんが見廻りにきて、個室だからずっと付き添っていても良いと言ってたんだ。だから今夜は、そこのソファへ転がって寝るよ。」
「・・・・・。」
「とにかく、側にいさせてくれ。」
ベッドに横たわり力なく頷く私を、彼の腕が包んで額に額を合わせる。
彼のお日さまの香りが鼻の奥に届いて刺激され、再び涙がじわっと滲み出る。
長い睫毛の一本一本がわかるほどの至近距離で、困ったように微笑んだ彼は親指のはらを頬に滑らせ、その涙を拭ってくれた。
この人の子供を失わずにいられた・・・
どうしても、どうしてもこの人の子供を産みたい・・・
とめどなく流れる涙を彼はいつまでも拭って、「もう大丈夫だよ」と何度も呟いた。
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