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「洋一さん、約束を破ってごめんなさい。」
「ん?約束?」
「電話で話した時、何もしないで休んでるって約束したのに・・・それを忘れて牛乳を買いにコンビニへ行っちゃったから。・・・その途中で出血したの。」
「・・・そうか。」
「あと・・・洗面所の床が、血で汚れたままなの。ごめんなさい。」
「いいよ、そんなこと。」
「もう固まっちゃって、取れにくいでしょうね。その時に簡単にでも拭いてくれば良か・・・。」
「ユリ?・・・いいって。」
「・・・・・。」
「何も気にしないで寝なさい。会社には、俺から連絡しておくよ。」
「・・・・・はい。」
僅かな灯りに照された彼の眼差し。
細い指が、私の前髪を優しく整える。
「お父さんから連絡をもらって、ここに来るまで・・・マジで、怖かった。」
「・・・・・。」
「もし、お前を失ったら・・・。」
「・・・・・。」
「ユリ・・・よく無事でいてくれた。」
そう言って彼は躊躇いがちに、私へ「おやすみのキス」をくれた。
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