花柄の髪どめ

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「これだけ買うと楽しいわぁ。ほら、この髪どめもスゴく良いでしょ?ユリちゃんは髪が長いから、これも必要だと思ってね。」 「助かります。本当に。」 「あとね、はいこれ。」 「・・・・・?」 それは私が小さい時のお誕生日に、兄がプレゼントしてくれたミッキーマウスのマグカップ。 その頃は気に入って毎日使っていたけれど、就職したころからは何となく子供っぽくて、食器棚の奥に置かれたままだったもの。 「お父さんからよ。今朝はやーく台所でガサゴソしてると思ったら、これを探してたんだって。ユリちゃんに持ってけ、って。」 「懐かしい・・・お父さんにも、ありがとうって言っておいて?喜んでたって。」 「わかった。・・・じゃあ、お母さん帰るね。」 「えっ・・・もう帰るの?」 「うん、また来るからねー。」 母は空になった袋を畳んでバックへ入れると、私の返事を待たないまま、嵐のように去っていった。
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