テーブルの花

3/3
前へ
/205ページ
次へ
「ふふっ。さすが、洋一さん。私がいた時よりお部屋が綺麗になってるかも。」 「んなわけないだろ。」 「はぁ・・・・・帰ってこられた。」 「・・・・・。」 「帰りたかった・・・。」 「ユリ、おいで。」 「・・・・・はい。」 両手を広げた彼の胸にそっと寄り添っておさまると、その腕が私の体をやわらかく包んだ。 久しぶりの感触に、甘んじて浸る。 「おかえり、ユリ。」 「・・・・・ただいま。」 顔をあげると彼が、長い長い「ただいまのキス」をくれた。 久しぶりの、溶けるようなキスだった。 唇が離れ、しばらく見つめ合う。 眼鏡の奥にある焦げ茶色の瞳が私へ語りかける。 「待っていたよ」と。 彼の手が私の顔にのび、鼻をキュッと摘ままれる。 私は笑いながら、彼の鼻を摘まむ。 それは二人だけの、秘密の合図。 おかえり・・・ ただいま・・・ 大好きだよ・・・ 私も、大好きよ・・・
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6383人が本棚に入れています
本棚に追加