世界に一人だけのひと

3/3
6327人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
「ふふっ。ギリギリって?」 「俺が・・・ギリギリなの・・・」 まだ完全に目覚めない私の唇を、啄むように何度も口づける彼。 頬にあった手は、いつの間にか背中を撫でて腰までたどり着き、私の体をグイッと引き寄せた。 おぼろ気な意識の中で私は、天井に向かって両腕を広げ、彼の気配を捕まえる。 「・・・おはよう・・・。」 「はよ。起こしてごめんな。」 「・・・・・洋一さんだから許してあげる。」 「ユリの寝顔が可愛くて、我慢できない。」 「やだ、寝顔を見てたなんて・・・あれ?」 「・・・・ん?」 「洋一さん・・・・この手はなぁに?」 彼の細くて骨ばった手が、パジャマの裾から入ってきてはスルスルと私の素肌を撫でる。 「なにって・・・だから我慢できないの。」 「や・・・あっ・・・洋一さん、だって。」 「ん?・・・だって、なに?」 「あっ・・・だって昨日の夜も・・・。」 「気のせい、気のせい。」 「気のせいって・・・・・・うそ、またするの?・・・・あっ。」 すっかり目が覚めた私にニヤリと笑った彼は、お構いなしに布団をめくった。 「はぁ・・ユリ・・・可愛い。」 慈しむように 愛しそうに 私を抱きしめるひと。 彼は、私の夫になった。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!