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甘い生活
「はぁ・・・寝不足です・・・。」
「ハハッ。ごめん、ごめん。」
彼は「ごめん」と言うわりに悪びれる様子もなく、私の頬をするすると撫でて笑っている。
今日は『結婚特別休暇』明けの、初出勤日。
私はどうにか身支度を整えて、靴を履いていた。
見送りに玄関まで来てくれた彼は、今日の午前半休までとっていたので、午後の会議に合わせて出社するという。
昨夜も今朝も彼に弄ばれてしまい、寝不足の私は口を尖らせながら彼を見上げる。
「こら、ユリ。そんな顔したら、また襲いたくなるだろ?」
「・・・・・洋一さん。」
彼は私の腰に両腕をまわし、ギュッと抱き寄せる。
「ほらそんな上目遣いで。誘ってる?」
「誘ってませんっ。私、もう出かけないと。洋一さん・・・冗談を言ってないでこの手を離して?」
「なぁ、ユリ。腹いてぇとか頭いてぇとか言って、もう1日休めば?」
「はあ?」
なまじ真面目な彼が真顔で言っているのが、なにより恐い。
「あー、マジでヤバい。ユリを行かせたくない。」
「ちょっ・・・。目が・・・目が怖い。」
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