前章

2/33
前へ
/75ページ
次へ
「一体誰がこんな物を。 いつ送られてきたんです」 「…ああ、それは…えーっと」 「なんでそんなにゆったりしてるんですか。 内容読みました?」 「読んだよ。でも…」 「腹が立たないんですか? こんな一方的な…… ひどいですよ、こんなのって」 お隣さんが普段通りだから、 私のほうがちょっと怒った声になる。 どうしてこの人を怒るのかは自分でもわからなかったけれど、きっと、不安になったんだろう。 出ていけと言われたら、 おとなしく出ていきかねない人に思えて。 「……一度、落ち着こうか、栗ちゃん。はい」 「えっ?」 私の剣幕とは対照的に、横宮さんは何ひとつ慌てぬままティーカップを手渡してきた。 勢いで受け取ってしまえば、片手でお盆を支えた器用な手つきが赤色のお茶を注ぎこむ。 「どうしてここで?」 「まあいいから飲んで。あと、大丈夫だよ。 それは僕宛の物じゃないから」 「えぇっ?」
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加