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「――ほら、見て。すごくきれいな夕陽」 夕焼け空を見るふりをして。 大きな声を出して。 隣で歩いている君の顔を、すっと盗み見た。 セピア色に染まる君の顔は、わたしの目線よりもっとずっと高いところにあって。ちょっと前まで感じられたあどけなさも、見つける事は出来なくなっていた。 ――またひとつ、おとなに近づいた。 おとなに、近づいたのだ。君も、わたしも。 ……でも。それでも君はどこまでも君のままだし、わたしも、ずっとずっとわたしのままだった。 だから、なんとなく、分かっちゃうんだよ。 お互い今、何を考えているのか。何を思っているのか。 だってわたしたち、小さい頃から、いつだって一緒にいたんだから。 わたしは誰よりも君の事をよく知っているし、君は誰よりもわたしの事をよく知っているんだから。 ――ねえ。だから今、君はそんなにつらい顔をしているんでしょう?
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