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「むむ、もしかしたら外にあるかもしれないにゃ」
雨は幾分か小降りになってきたけれど、それでもまだ降り続いている。できれば外に出たくはない。
「なあ、今日じゃなきゃだめなのか」
「もちろんだにゃ。それにあんまりもたもたしていると僕の存在が消えてしまうかもしれないにゃ」
たしかに最初と比べるとさらに透明になっているような気がする。この調子でいくと明日には完全に見えなくなってしまうのかもしれない。
「わかったよ」
僕は黒い傘をさして家を出る。僕の進むスピードに合わせてチャトラの精霊はついて来る。
姿こそは歩いて見えるが、足が地面をけっているようには見えない。
「ところで君は飛ぶことはできないのか?」
「やろうと思えばできるにゃ。でも猫が空を飛ぶなんてとても不自然にゃ」
猫がしゃべっている時点で不自然だと思うが。試しに空を飛んで見せてくれたが確かに不自然だった。
家の目の前の道を進み、突き当りに着く。
そこには以前起きた事故によって角度の変わってしまったカーブミラーがある。
「もしかしてこれか?全く役に立ってないよな」
「今回もはずれらしいにゃ」
「何でそんなすぐ分かるんだよ」
だんだん返答が速くなっている気がする。
「チャトラの勘だにゃ」
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