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「一体僕はなんて嘘をついたっていうんだろう」
答えを求めたわけではない。ただ沈黙に耐えられなかっただけだ。
ふと後ろを振り返る。
チャトラの精霊がいない。
もしかして消えてしまったとでもいうのか。
「そんなこと僕に分かるはずがないのにゃ」
声のする方向を見るとほとんど透明になったチャトラの精霊がいた。もう後ろにある滑り台の赤色はくっきりと見える。
「どうやらそろそろ時間のようだにゃ」
「待ってくれ。君までいなくならないでくれ。今君をなくしたらチャトラが完全にいなくなってしまう気がするんだ」
温かくて大きな雨粒が頬を伝う。
「そんなに悲観しないでほしいにゃ。僕はあくまで魂の一部分だにゃ。だからすべての魂がなくなるわけじゃないのにゃ。ご主人様の隣にはいられないけれど早く嘘を見つけて、本物のチャトラを抱きしめてやってほしいにゃ」
「わかったよ。なんとしてでも見つけるよ」
健闘を祈ってるにゃと言い残してチャトラの精霊は消えていった。
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