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人間性は多種多様
とある私立高校で、定期試験が無事に終了した日。数学科の教員室では、その場に相応しくない怨嗟の声が上がっていた。
「あぁあああっ! どいつもこいつも! 私の時間と労力を返せえぇぇっ!!」
「五月蝿いぞ、沢井。他人の仕事の邪魔をするな」
着任三年目の教員である沢井舞が、赤ペン片手に目の前の答案用紙を睨み付けながら憤怒の形相になっているのを、隣席の東和文孝が冷たい目で見やる。しかし舞は恐れ入る事無く、二年先輩の彼に切々と訴えた。
「だって東和先生は、自分が教えた内容が生徒の頭に入っていない現実に、愕然としないんですか!?」
「生徒の頭が悪い。俺達の教え方が悪い。あるいはその複合の結果。それがどうした」
「……聞いた私が馬鹿でした。だけどこれは、あまりにも酷くありません!?」
「うん? その答案用紙がどうした?」
冷たく切り捨てられてがっくりと肩を落としたものの、舞はすぐに目の前の答案用紙を手に取り、東和の前にかざしてみせた。解答欄が殆ど埋まっていないその答案用紙を見て彼が怪訝な顔になっていると、舞がその用紙の一点を指差しながら吠える。
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