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盗聴2日目
盗聴二日目
19:32
ピンポーンと、宅急便が届く。
いそいそと段ボールをあける。ガムテープがはがれるバリバリとした音にわくわくする。
より音が聞きたいと考え込んだ結果、ネット通販で特殊な機械を買ってきた。機械というか、いわゆる聴診器なのだが。
もちろん、医療用の本格的なものではない、通販サイトで、聴診器で検索して一番上に表示されたのを特になにも見ずに買った。通販サイトは情報量が多くて、私にはとても使いづらい。
これからは、こいつが耳となるのだ。早速壁にむけて聴診器の集音場所を密着させる。
とたんに、戸成さんの家の音がより鮮明に聞こえるようになった。うん、性能に問題はない。昨日よりも色々な音が拾える。
時計の秒針の音、壁際の家電のモーター音。かすかに音楽も流れている。
ただ、聞こえすぎて、私は困ってしまった。
戸成さんの部屋から、キシキシと何かが歪むような音がする。ベッドのスプリングが伸び縮みを繰り返す音。
加えて、声も聞こえる。これは女の人の声だ。
いいや、誤魔化すのはやめよう。はっきり言ってしまえば、性交中のあえぎ声だ。
他にもとぎれとぎれで、男性のような低いくぐもった声も聞こえる。
まだ夜も早いのにおさかんなことで。壁から聴診器を離した。
自分は、音フェチではあるが、性交中の声だけは、どうも盗み聞く気にはなれない。これだけは、音や声から行為の想像を働かせることに、罪悪感しか感じられないのだ。
……戸成さん、男と女どっち側かな……。
自分は赤くなった顔を隠すために、テレビの音量をあげた。
今日はあの映画を見よう。状況に合わせたサントラが素晴らしい映画だ。演じている俳優の、セリフの言い方も、感情がこもっていて、私にも登場人物の感情がわかりやすい。他にもまだ観ていない映画があったはずだ。
テレビ台の下のDVDデッキがカシャンと音をたてながらお気に入りのDVDをのみ込んでいった。
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