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詰み映画を見続けている途中、戸成さんの部屋から、ゴトンと、大きなものが床にたたきつけられるような音がした。
しまった、もう情事は終わっていたか。盗聴を再開するタイミングを逃したようだ。
急いで聴診器を向けても隣の部屋からは、特に音はしなかった。さっきの音がなんだったのか、部屋は静かなものだ。家電のモーター音しか聞こえない。
さっきの音、そこそこ音量で映画を流しながらでも聞こえたのだ、相当大きい音だったのだろう。
質量のあるものが、質量のあるものにぶつかる、鈍くて低い音だった。そして、甲高い金属のような響きもない。何が、まではわからないが、金属以外の何かが何かにぶつかったのだろう。あのときの一回切りでは細かいところまではわからない。
何だったんだろう。もっとよく聞いておきたかったのに。何か床にでも落としたのだろうか。
もう音は鳴ってくれないらしい。久しぶりに興味を引かれる音がしたというのに、惜しいことをした。
映画に集中しようとして、ふと、考える。
やけに、静かだったな、と。
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