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盗聴4日目
盗聴四日目
17:43
私は、部屋につくなり、床に倒れこんだ。カラン、と杖が倒れる音がする。
社会人になってからしばらくたつが、働くというのは、ただただしんどい。学生の時とは忙しさが違う。
私は、特殊な職業をさせてもらっているが、それでも、家に帰ると、疲労がたまっていることに気づかされる。今日も、炭酸の音で音階を作る、と言ったら上司からアホかと言われた。これは没にされるかもしれない。社会人は人間関係でもストレスがたまりやすい。
のそりと起き上がる。疲れた時は、やっぱり趣味だよな。
私は、隣の部屋の音を聞いた。
轟轟という重低音が継続的に聞こえる。これは、キッチンの換気扇を回している音だろう。私の部屋にも同じものがある。
他には……何があるだろう。よくよく耳をすませば本当に、かすかに、換気扇以外の音も混じっているのに気づいた。
ゴリッ …… ゴリッ ……
本当に、小さな音だ。私はかなり耳がいいほうなので聴こえているが、それでもかなり聞き取りにくい。
音自体が小さいのもあるし、音自体が低くて、鈍いからだろう。
例えるなら、大きな漬物石で、茹でた白菜を潰している音……とでも言おうか。いや、私も漬物石で白菜を潰したことなんてないけど。今度やってみるか。
音の間隔もまばらで、少なくとも機械的に発生しているものではないようだ。
なんだろう、この音は。私は首をかしげた。
日常生活で何をしたらこんな音が出るんだろう。私は目一杯想像力を働かせて、音の原因を考え込んでいた。
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