【二章】最初で最期

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              ◇  さて、その「春夏秋冬殺人事件」は忘れもしない二年前の七月……七月――上旬でしたっ……け?   いや、ほんと! 七月だったということははっきりと覚えているんですよ! ――覚えてはいるんですけど……。  むむ……そう言えばその年の七月七日――つまり僕の誕生日はしかとお祝いしたしその後だった気がする。  それじゃあ七夕は過ぎてましたね。  うーん、だとすればひょっとするとその日はもう七月上旬とは言えない頃だったのかもしれません。  ま、そんなことはなんでもいいことですけれど。  この世の中で、日付なんてものを気にしているのなんて束縛とイベント信仰心が強い彼氏持ちの女の子だけでしょうに。  結局のところ、僕達のようなただの一般市民にとっては七月五日が七月十三日だったとしても、大した影響なんてものは無いんですよ――金曜日が月曜日になるのは大違いでしょうけど。  だって、重要なのは何時(いつ)それが起こったのかではなく、何事が起こったかなんですから。  何時(いつ)あった話なのかではなく、何事があったのかという話の方が貴方も聞きたいでしょう?   だから、その期待にお答えしてまず「春夏秋冬殺人事件」――もとい、不知川(しらずがわ)モールに何があったかと言えば。  首切り殺人(・・・・)がそこでありました。  そこでさっきの前置きが早速活きてくるわけですね――じゃなきゃわざわざあんな話しませんけど。  活きてこない前置きなんて御多分に洩れずなんの意味も持たない駄文でしか無くなりますし、そんな無駄なことに貴重な人生の何百分の一かを費やす人間はそうはいませんよ。  僕はたまにしますけど。  さて、いきなり結論――というよりは問題提起の方が近いですが、そんなものを放り投げてある程度話の見通し付けたところで、僕は話の筋道も付けなきゃいけないと思います。  今のところ首切り殺人があったとしか言ってませんからね僕。  それだけだと誤解してしまっているでしょうが「春夏秋冬殺人事件」とは即ち、首切り殺人のことでは()()()()()
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