【一章】首切り死体を見て疑うべきなのは犯人の良識でしょうに

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 どこまで話を段取りましたっけ――えーと、そうそう『名探偵の推理ショー』。  僕が『名探偵の推理ショー』を倦厭する理由なんて大体今述べた超個人的な理由が殆どですが、しかしそれを差し引いても探偵がつらつらと事件について語るというのは些か不適格じゃあないかと思うんです。  不適格な不適役。  だって不敵な笑みが似合うのは何も名探偵だけじゃないんですから――そんな奴よりも適役な(かたき)役、殺人事件には必ずそんな素敵な人材が居るはずなんですから。  例えば、  それが突発的犯行だとしたら、混乱の渦の中にいるはずの自己をしっかりと掬い上げ、瞬きをする程の間で計画を練り上げ、それを実現せしめた鬼才。  あるいは数週間、数ヶ月、数年……その全てをかけて綿密なトライアンドエラーの果て一種の芸術と言ってもいい絵図を生み出した傑物。  あるいは夥しいほどの結末と目を覆うような屍の上で何事もなく午後のティータイムを楽しめるような、殺人を人殺しとは思わない専門家。  そんな風に、自ら立てた計画を実行に移し、当然起こりうる当初の予定通りにはいかないハプニングにも柔軟に対処し、最終的には人を殺め目的を成し遂とげた――そんな人間が殺人事件の現場には必ずいるはずなんです。  なにせ犯人はこの中に居るんです。
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