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齋藤くんは優しい。
見れば見る程、気持ち悪さではなく、生真面目さと優しさが見えてくる。
嫌いたいのに、嫌いになれない。
はぁ~
悩ましげなため息を吐くと、先生が微かに笑った。
「青春ねぇ~。私の周りにはこれほど積極的な子はいなかったかなぁ」
「先生は結婚しているんですか?」
「ええ。旦那は高校の同級生……」
「ホントですか!?」
「……がセッティングしてくれた合コン相手よ」
してやったり顔の先生に、私はガックリと肩を落とす。
「夢壊しちゃうようで悪いんだけどね。友だちが女医になって、医者仲間を集めてくれたのよ。そこで医者をゲットしました」
私がもっとも毛嫌いしてるヤツだ……
「それで家族ってやっていけるんですか?」
「まぁね。まだ離婚してないし、子どももいるし。引っかかりは医者だったけど、決め手が医者だったわけじゃないもの」
先生の言葉の意味がわからなくて、私は首を傾げた。
「極端な話ね、家から学校までの間でも沢山の人とすれ違っているわけでしょう?でも何か引っかかりがなかったら、その人たちと関わる事はないじゃない。何かが引っかかって初めてその人を意識するのよ。その引っかかりが医者でも直感でも、何でも良いと私は思うわ」
先生は自分の当時を思い出しているのか、クスリと笑った。
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