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「見れば見るほど、目が離せなくなって。知れば知るほど、興味を惹かれて。そこに愛しいって感情が乗っかったら、好きって事でいいんじゃない?」
私の中で、何かがストンと腑に落ちた。
サイトウくんに出会ってから今まで、ずっと心が騒いでた。
何もかもがカッコイイ。好きだ。
でも、この好きはマヤカシなんだ。
私の本当の感情はどこにあるんだろう。
そう騒ついていた心が、今はおとなしい。
5限終わりで教室に戻れば、齋藤くんがいつものように本を読んでいた。
「齋藤くん、ノートとか、色々面倒かけてゴメン」
「僕は大丈夫だよ。それより体調、大丈夫?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
ふと視線を落とすと、本には「キャンプの極意」と書いてある。
「キャンプ、好きなの?」
「普通かな。でもこの本には緊急時の対応がしっかり書いてあって、キャンプ場だけじゃなくても役立ちそうだよ」
「緊急時?」
「怪我とか、事故とか、毒のある生き物とか。何かが起きた時に役に立てたらいいと思って」
予想外な答えに私はキョトンとしてしまう。
齋藤くんはそれに気付かずか、気にせずか、本をペラペラめくって、あるページで止めた。
「ほら、ここなんか、出血した時の対処法が書いてある。怪我の部位や大きさによっても最善の処置は変わるから難しいよね」
「医者になりたいの?」
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