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「何してんだよ」
「たまたま通り……」
「小谷さんに誘われて盗み聞きしてました」
小谷はメグミの苗字だ。誤魔化そうとしたメグミに対して、齋藤くんが素直に答える。
「じゃ、聞いてただろ?アイツは『サイトウダイスケ』って名前が好きで、お前自身が好きなわけじゃないんだとさ。お前も俺も馬鹿にされてんだよ」
メグミは気まずそうに私たちを交互に見るが、齋藤くんは少し唸ってから口を開いた。
「でもさ、僕は人に嫌われやすいみたいだから、もし名前だけで好きになってくれるなら、それはこの名前をつけてくれた親に感謝だ」
屈託のない笑顔を口元に浮かべる齋藤くん。
格好良いし、可愛いし、優しいしで心が追いつかない。
「何だよ、それ。俺の方が悪者みたいじゃねぇか」
「それは違うよ。斉藤くんの意見のほうが普通だよ」
不貞腐れる斉藤くんも愛しくて、フォローする齋藤くんとの絡みも良い。
ダブルサイトウの神々しさに悶えてしまう。
コレはコレで有りだ。
「大丈夫、ハナ?」
メグミの声で我に帰る。
フラつく私を心配してか、メグミは申し訳無さそうに斉藤くんを見た。
「私もハナの言う事は理解できないけど、ハナは自分の為に他人を利用する子じゃないから、それだけは信じてあげてほしい」
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