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5歳の誕生日の日、夢を見た。
起きた時、なぜだか幸福感に満たされていたのを覚えている。
「ハナ、今日男の子に告白する夢を見たでしょ?」
「ママ、なんでわかったの!?」
「ママはハナの事何でもわかっちゃうんだから。それで誰に告白したのか教えてくれる?」
私は夢の中で呼んだ男の子の名前を伝える。
そんな名前の子を私は知らなかったが、その名前を言うだけで心がフワフワした。
しかし、その名前を聞いたお母さんは、可哀想と面白そうの混じった複雑な表情をしていた。
あれから10年。
高校の入学式。
「おはよー、ハナ!私たちホントに今日から高校生なんだね!」
「メグミ、おはよ!満員電車キツくなかった?」
中学の同級生であるメグミと高校で合流する。
同じクラスである事を喜びながら体育館へ向かっている時、その出逢いは訪れた。
1人の青年がメグミの背後を追い抜いていく。
それはスローモーションのように、一コマ一コマ私の脳裏に焼きつく。
メグミの声も周囲の雑音も聞こえなくなって、聴覚が感知するのは、私の呼吸音、心拍音、そして彼の足音のみ。
「待って!」
私は去ってしまいそうな彼を慌てて掴んだ。
彼は振り返り、驚いた様子で私を見つめる。
それだけの動作でため息が漏れる。
「……あの、何か用?」
「私、板垣華(イタガキハナ)と言います。一目惚れしました。まずは友だちになってくれませんか?」
彼の声に身体は震え、気づけば公衆の面前で告白していた。
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