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「私、今まで男の子を好きになった事ないし、ときめいた事もないし、昔夢で告白した人と運命の出逢いがあるんだって思ってたのに……まさか、タイプの違う2人に運命感じるなんて……」
私はどうしていいかわからず、目の前のお煎餅を貪った。
お母さんもお煎餅を一枚口に放り込んでからお茶のおかわりをくれる。
「夢の事は覚えてるのに、名前は覚えてないの?」
「お母さんは覚えてる?」
「もちろん。『サイトウダイスケ』くんよ」
偶然の一致にしては気持ち悪い。
お母さんの作り話を警戒しながら、私はコップを置いてお母さんを見つめる。
お母さんもふぅっとため息をついてから私を見つめて語り出した。
「ハナにね、大事な話があるの。お母さんの家系の話なんだけど、5歳の誕生日に夢の中で告白した名前の人を、私たちは好きになってしまうのよ」
「……え?」
「私たちは、5歳の誕生日に夢の中で告白した名前の人を好きになってしまうのよ」
「まんま繰り返されても、意味わかんないんだけど」
「だーかーらー、私たちは5歳の時点で好きになる人の名前が決まっているの」
「……娘が真剣に悩んでるのに、変な作り話はやめてよ!そんな話聞いた事ない!」
「言った事ないもの。お母さんの時は大変だったわ。『イタガキゴウゾウ』に出逢えなくてね」
「勝手に話を進めないで!」
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