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◆
風を切る音が聞こえた気がした。
サッカーボールがゴールネットを揺らす。
「斉藤くん!ナイスシュート!」と女子たちが歓声を上げる。
「コラッ!そこの女子たち。ちゃんと授業を受けなさい」
「斉藤くんがカッコイイから仕方がないと思います。ね、板垣さん」
斉藤大輔くんの完璧なシュートに見惚れていた私は我に返る。
2クラス合同の体育の授業。
1組である斉藤くんと、2組である私たちは体育の授業が一緒だった。
ただ男女は別で、男子はサッカー、女子はハンドボールである。
網で仕切られた校庭の向こう側でサッカーコートを走り回るサイトウダイスケに、惚れたくないのに、ついついときめいてしまう。
でも、今のは格好良くシュートを決めた斉藤くんが悪い。
他の女子だって「格好良い!」って騒いでいるし。
私の大告白の影響もあって、1組の斉藤大輔くんに対して歓声をあげる事は一般化されてしまった。
本心なのか、ただ騒ぎたいだけなのか、私の代弁者を装ってキャーキャーと斉藤くんにエールを送るのだ。
斉藤くんの出番が終わり、違うチームの試合になると、女子たちも自分たちの授業に向き合い始める。
私もハンドボールの練習に力を入れようと思うのだが……
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