1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ハナ、斉藤くんの試合終わったのに、まだ見てるの?」
齋藤大介くんの走りに見惚れていた私は我に返る。
みんなも持て囃す斉藤くんに見惚れるのは仕方ない気がする。『サイトウダイスケ』の呪いが無くても好きになる対象だって事なのだから。
だけど、みんなが毛嫌いする齋藤大介くんにも目を奪われてしまう。
これはやはり呪いだ。
「うちの斉藤はやっぱ鈍臭いよね。ボールに関わる事なく無駄に走ってばっか」
「でも、あんなに走ってて息切れしてないなんて、体力あるんだね」
「え?何か言った?」
「ううん、何も言ってない」
やっぱり呪いだ。頭の中で良い方に解釈される。
私は一心不乱に授業に集中する事で、邪念を追い払おうとした。
体育だけじゃない。教室での授業もそうだ。
そう心掛けてはいるのに。
齋藤くんは真面目で、真剣に授業を受けておりノートもとっている。
国語が苦手なのか、居眠りしがちだ。
本は好きらしいけど、小説ではなく教養本ばかり。そのジャンルは色々で、この間は『世界の毒物』だったが、今は『火災現場のなんとか』などを読んでいる。
齋藤くんの情報がどんどん増えていく。
ともすると見惚れてしまいそうなので、険しい表情で睨みつける。
最初のコメントを投稿しよう!