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<19>
---視界が真っ白になる。
湖が一面、眩ゆい白に覆われたようだった。
否。
それは己自身が発している光そのものだった。
胸がとても、とても熱い。
「--これ、、、」
迸る光の奔流の中で、胸元の熱をまさぐる。
着物の下から出てきたのは、彼がくれた品物だった。
「手鏡、、、」
『---聴こえますか、山の女神よ』
「え」
それは現実の声ではない。
鏡から直接伝わってくるような、何かの、誰かの言葉だった。
「だ、誰だ……?!」
『貴女が大切にしてくれていた、この手鏡に宿っていた者です』
「?! な、何だと」
『驚かれることはありません。そもそもこの国は八百万の神の国。貴女とてその一員のはずです』
「なんと。付喪神が宿っておったのか……美しい鏡だとは思っておったが」
『貴女のその純粋な神気が、わたしに力をためてくださったのですよ。さぁ、時間がありません』
そこでようやく我に返った。
光の世界で、ぐるぐると首を巡らす。
「---彼は! あの男はどうした?!」
『邪気に囚われたようですが、まだ今なら間に合います。わたしの力で、少しの間だけ水神を退けましょう。その隙に彼と早く岸へ上がってください』
「---分かった! 恩に着るぞ、手鏡の神よ!」
くすり、と『彼女』が笑った気がした。
『---息子のこと、よろしくお願いしますね』
「---ッッッ、」
息子? 息子だと???
「ッッッ、待て! そなたはもしや……ッッッ!!?」
ビッ、と閃光が走った。
目を開けていられないほどの奔流に飲まれて、山姥は思わず瞳を閉じた。
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