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鎖を辿り、ついに鎧と服の隙間に「それ」が見えたとき。彼の心臓は大きく跳ね上がり、凍りついた。
『なら…あなたを傍に感じていられるように。
ずっと肌身離さず持っておくことにする』
最後に見た微笑みが、彼の脳裏に蘇る。
彼女に贈った指輪。それを首飾りにして、本当に、ずっと持っていたのだ。戦争が始まっても、決戦の地が決まっても。彼と剣を交えることになると知っていても。
(ーー知らずにいれば、よかった)
何をとは言わない。
言うなればすべて。すべて、知らずにいればよかった。
堰が、切れた。
「――っアアアアア!!」
彼は咆哮した。
叫びは、勝利の雄叫びとして人々に伝わった。直後、兵士達から割れんばかりの歓声が上がる。敵国の兵士達は崩れ落ち、地に蹲る。
遂に、戦いは幕を引いたのだ。
だが、歓喜の声が響き渡る中で、彼の絶叫は止まない。
丘の上には、誰よりもこの終幕を悲しむ男が立ち尽くしていた。
叫んだのは、雄叫びなどではなく、慟哭。
涙が見えないのは、俯いたままだから。
だが彼の悲しみを、誰も知る由もない。
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