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さっき見た妖艶という言葉にふさわしい二人の姿がチラつく。関係ないにしても、先生があの雰囲気を醸し出せる大人ということに変わりはなくて拗ねたくもなる。
「もちろん違いますよ」
「じゃあなんで!」
先生がオレを抱き上げて、膝の間に座らせた。ぬいぐるみでも抱き締めるように後ろからぎゅっと腕を回す。
「喉から手が出るくらい欲しいですよ。でもね、君が大切なんです」
「オレの為を思ってとか、そういうの要らねえから!子供扱いすんなよ!」
今はそう思われるのが一番堪えるのに。まさか先生の口からそんな当たり前の、普通の大人みたいな言葉が出るとは思いもせず言葉がきつくなった。
「君の為?────それは……全然違います」
先生の声が低く沈む。やっぱり言わないと駄目なんですね……そう聞こえてきて、もう一度強く抱き締められる。
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