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190センチ近い間宮よりも体格の良い人間はあまり見掛けない。ごく平均的な霧谷も間宮の前では小柄になる。顔を伏せた霧谷を見下ろすと間宮の目につむじが見えた。
「……生徒のためを考えて言ってんだろうが」
「本当に、それだけですか──」
間宮は顔を寄せ、更に霧谷との距離を縮める。
「──そういうとこだろうが!くそ、退け!」
腕で払いのける霧谷から離れ、間宮は大人しく一歩下がった。
「誰も好きじゃねえくせに、誰にも彼にも思わせぶりなことしてんじゃねえよ」
間宮はじっと視線を注いで動かない。
霧谷の口がさらに開きかけ、なにも告げずに身を翻す。
準備室の扉が荒々しく開閉され足音が遠ざかっていった。
「そんなつもりないのにな……自分だって昔っから、怒りっぽい」
残された間宮は肩で息をつき、鬱陶しい前髪を?き上げた。端正な面が顕になる。フレームが太くて重たい眼鏡も外し、眉間を指で揉む。
生徒だろうが教師だろうが間宮のそんな姿を目にすれば、思いもかけない美貌に釘付けになる。性別すらいとわない。十年来の旧友である霧谷が、かつて間宮に想いを寄せていたのも事実だった。
窓際に移動して間宮は壁にもたれる。緩慢に腕を組み、眼鏡のツルを唇に当て、昼下がりの校庭を眼下に映す。
何かに思いを馳せた間宮の、垂れ気味の目じりが徐々に下がっていき、こらえ切れなくなったように、ふふっと息を吐き出した。
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