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声を掛ける このまま帰る
選択肢がピコピコと超高速で揺れ動く。
(どうしようどうしようどうしよう………あっ!パンのお礼、言えばいっか!)
天啓が降りてきた。カーソルは左で決定した。
「間宮先生」
声を掛けたと同時に先生は振り返った。追う足音が分かっていたのかもしれない。
「汐見君──!」
想像したよりもずっと、喜んだ様子で先生は迎えてくれた。少し意外だ。でも鬱陶しく思われるよりは全然良い。
「これから下校ですか?」
「うん。カメラ部、終わったとこ」
顔は見れないけど、なんとか普通を装えた。
先生の声は低くて柔らかくて心地いい。ずっと、聞いていたくなる。
「先生。パンありがと!すっげーおいしかった」
「良かった。購買のお姉さんに無理言った甲斐があります」
(お姉さん……)
お姉さんの平均年齢は60歳だ。
「でもさあ酷いんだよ。先生仲良く分けろって言ったのに、左十が半分食っちゃって。残りを右白と分けたから1/3……あれ1/2?……とにかくちょっとしか食べらんなかった」
ものすごく頭が悪そうだけど、舞い上がって簡単な計算すら出来なくなってる。
「汐見君は数学が苦手なんですね」
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