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壁の時計に目を向けた先生が立ち上がる。
「でも今日は、そろそろ帰りましょうか」
時刻は19時半になっていた。楽しい時間の終わりは反動で気持ちがしぼむ。
「せんせー。本当の本当にまた来ていい?」
「不安そうですね」
「不安っていうか……」
(先生だってきっと暇じゃないだろうし)
「大丈夫ですよ、またお話しましょう。約束です」
「ん」
約束という言葉に勇気づけられオレも立ち上がる。
もう一度、先生の顔がちゃんと見たかった。
少しだけ覚悟して、オレを待っている先生を真っ直ぐに見上げた。分かっているはずなのに、思った以上に頭の位置が遠い。首が痛くなりそうだ。
(あれ……マトモに向かい合うのって初めてじゃないか)
よく考えたら尻もちを着いていたり顔をそらしてたり背後だったり、おかしな位置ばっかりだ。
それにしても大きい。見上げるほどが比喩でないくらいに。
「先生……ほんと背、大っきいね………」
腰の位置なんか高すぎて感動する。
「そうですね。でも……」
先生がオレの両肩に手を乗せる。なにかを含んだような言い方だ。
「大きいのは背丈だけじゃないですよ」
耳元に顔を寄せて囁かれる。
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