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(また誤解されるような事してる──!今は困る、妄想したら帰ってこれない。左十も右白も居ないから!)  焦っているオレをよそに、妄想でない先生が動いた。  手のひらがゆっくりと二の腕に降りてくる。その動作は撫でられているようにしか思えない。さらに滑りながら下降して、手首を掴んで持ち上げられる。 「な、なに……して……先生っ」 「ほら、二回りくらい僕の方が大きいでしょ」  声と共に手のひらを重ね合わせる。乾いた温かい感触にビクッとなる。ただ触れ合っているだけなのに、恥ずかしくて顔に血が上る。 「……手の、大きさ……?」 「ええ」  確かに大きさを比べる時にそうすることもある。だけど……オレが意識しすぎるせいなのか、これはなんか違う気がする。  手のひらが離される。ホッとして力を抜いた途端に、今度は頬を包み込まれた。大きな手が……オレの頬を移動する。 (うそ……これ……絶対撫でられてる──) 「ぅ、──っや……せん、せ」  耳を指でくすぐられて、全身にビリビリと弱い電流が走った。 「顔も、耳も、こんなに小さい。君は何もかも小さくて」  続く言葉を予感して心臓が大きく跳ねる。 (や、やだ。それいま、言わないで先生──!) 「──かわいい」 「……っ、」  妄想の方がマシだったかもしれない。現実の威力がすごすぎる。 (からかわれ……たんだろうな)  余りに分かりやすく、応援うちわ並みにデカく『ダイスキ!!』とか顔に書いてあったんだろう。バレても良かったけど、あんな反応をされるとは思わなかった。──大人って怖い。  (でも分かってない。こんなの余計好きになるだけだ。そしたら先生困るだろ──)
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