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 なんとなく想像していた薄い印象とは正反対だった。目元には長くて多い睫毛。柔らかい印象の黒目がちな瞳はキリンを思い出す。鼻筋はしっかり通っていて、唇は薄いが大きくて形がいい。 (なんで隠すみたいに、ダサい眼鏡と陰気な頭してんだ。こんなかっこいいのにもったいねー。オレなら無双すんのにな)  さっきと真逆の意味でマジマジ見てしまう。 「かわいい」  その超絶美丈夫が子供のような顔で笑った。不意打ちに胸が詰まる。こんな破壊力のある笑顔を見たことがない。 (──かわいいってナニ!?) 「ペンギンの親子」  名前の横を指さしている。 (あ、シール)  小1の妹が勝手に貼ったシールだった。彼女は今シール期で、被害は家中に及んでいる。  シール期とは目に付いたもの全てにシールを貼ってしまう成長過程における行動の一つ、とオレが勝手に思っている。 「はい、どうぞ」  立ち上がった先生に教科書を渡される。 「あ、りがと……」  なんだかおかしい。目と胸と耳がゾワゾワする。かわいいは、シールのことだったのに脳みそが勘違いしてるのか。 「もう廊下は走りませんね?」 「うん……」  全部が先生に反応してるみたいでドキドキしている。
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