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「汐見君が良い子で、先生嬉しいです」  頭にポンと手を乗せられる。一瞬なのに、ほんわりあったかかった。 「君たちもね」 「あい」 「へーい」  クラスメイトの気の抜けた声に送られて、先生は職員室に戻って行く。 「ねー今の誰」  友人の片方、左十(さとう)が尋ねる声がした。 「選択生物の先生。間宮(まみや)先生、だっけな」  もう一人の友人、右白(うしろ)が答えている。 (かわいいって、オレに言ったわけじゃないのに……) 「っていうか汐見──」  オレの顔を見た右白が何かに気づく。 (──やめろ、言うな) 「わ、シオ顔真っ赤」  左十がこちらを向いて驚いている。 「汐見……お前……チョロ過ぎじゃね?」 「うるさい分かってる。それ以上言うな」  オレは先生に恋をした。自分でも残念なくらいチョロかった。  その日、やきそばカレーパンは手に入らなかった。
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