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「シオがしおっしお」  つまらないことを言い、左十が絵筆でオレの頬をくすぐった。 「今度は何へこんでんの。お前らラブラブじゃなかったのかよ」  反対側で右白が同じことをする。モシャモシャと鬱陶しい。 「うっぜー!」  二人の手から絵筆をもぎ取る。 「ハイそこの三人。騒いだら授業するからな」  霧谷先生の言葉にクラスメイトからの視線が痛い。今日の美術はデッサンで、残った分は夏休みの宿題になるという、実質自由時間だった。それを潰しかねないオレらへの威嚇だ。連帯責任は恐ろしい。教室の隅でごくごく密やかに雑談を続ける。 「あのさ……オレみたいなガキとか、相手にしてもつまんねーと思う?」  胸の中のもやもやを、あからさまに打ち明けた。こいつらに見栄を張っても仕方ない。今はそんな余裕もない。 「えっちの話?そんなのちょー楽しいと思うけど。開発し放題じゃん。つーかウソ、まだ手、出されてなかったの?」  左十がイキイキと輝き出す。 「いや……出されてたけど急に出さなくなった……みたいな感じ」 「何だよそれ。やっぱ遊ばれてるだけなんじゃねえの」  右白の表情が険しくなった。
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