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夏休みはとっくに始まり、今日は臨海学校当日だ。
貸し切りのバスに揺られて数時間。切り立った崖を抜けた先に拓けた海。そこは──秘境みたいなプライベートビーチ。
立ち並ぶ戸建ての南国風コテージ。オレンジ基調のレンガ屋根。開放感に溢れた吹き抜けの室内。木材が多く使われ安らぎの香りが漂っている。さらには海に繋がるバルコニー。
学校の合宿ってイメージからは程遠い。到着時、生徒達はモアイ像みたいな顔になった。オレもなった。
そして出迎えるのは、青い海。白い砂浜。焼け付く太陽。揺れるヤシの木。左手にバケツ。右手にクマデ。ハーツパンツにビーチサンダル──。
しつこいほどのワクワク要素が盛りだくさんでも、オレの気分には重りが付いてる。
パーカーを頭から被って膝を抱えて座り込み、潮干狩り用のクマデで、力なくショリショリと砂を引っ掻く。
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