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 教員用のコテージも生徒達と同じく、室内は天井が高く広い造りになっている。フロアは一つで、開放感を出すため壁はなく、代わりに所々に仕切りが置かれる。玄関を入ってすぐにある、籐で編んだ衝立(ついたて)の向こう側に間宮を押し出して霧谷は息をついた。 「おまえなあ、欲求不満も大概にしろよ」  間宮は面白くなさそうに、部屋から見える海へと顔を背けている。水面(みなも)からの陽光が室内まで乱反射して眩しいほどだった。光の加減か衝立の裏側で影が揺らぐのを目の端で捉えて、霧谷が口元を歪ませた。 「お前は一応でも先生なの、先生。いくらなんでも立場ってもんがあんだろうが」 「よけいなお世話です」 「余計じゃねえよ、周りに当たんなつってんの」  霧谷は歩み寄り、胸ぐらを掴んで間宮を見上げる。 「……お前まさかまだヤッてねえのか。それで悶々としてんのか」 「──関係ないでしょう」  硬い声で間宮が答えた。 「おいおい柄じゃねえだろ?お前が、いまさら自制することに何の意味があるんだよ。とっくに手は出してたんだろ」 「だから、関係ないでしょう先輩には」
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