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 部活中も間宮先生のことで頭が一杯だった。カメラ部だからぼーっとしてても怪我はしない。飼っている犬を見栄え良く撮りたくて技術の習得に入部したけど、今はそれどころじゃない。時計を見ると18時。部活を終了してもいい時間だ。間宮先生が生物部の顧問なのは調べがついている。 (行ってみちゃう?)  会いたいけど会いたくない。顔を見たいけど話すことなんてない。──乙女の思考に陥ってる。  誘惑には勝てなくて生物室を経由して下駄箱に向かう。そんなとこを通らなくても行けるけど。 (……うわぁぁどうしよう──居るよ)  あまりにもタイミング良く生物室から出てきた先生が鍵を閉めている。ただそれだけなのに見惚れる。手も脚も長い……。 (がっしりと逞しい体躯の大人の男が、大きく無骨な手で鷹揚に鍵を握り、鍵穴にゆっくりと差し込んで──るだけじゃん!)  ……現実なのに妄想っぽい。  先生は廊下の端にいるオレに気付くことなく、背を向けて職員室に戻っていく。
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