牽制~Ikuto~

2/8
73人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
「いーくと」 肩に重さがかかる。 「香、重たい」 「いいじゃん、いいじゃん」 なんて、呑気に返事をする。 「朝から元気だな、香は」 香はいつも明るくて、落ち込んでいても香がいると元気にさせてもらえるくらいだ。 「郁人に会えるからだよ」 ニコニコして言う香にどんな顔をしたらいいかわからなくなる。 俺は香のこと、なんとも思ってないのに。 でも、友達としては明るい香のことすごく好きだから傷つけたくない。 でも、告白なんてされてしまえば、ハッキリと口にしなくてはいけなくなる。 今までも、告白はされてきたけど、彩香のことを好きな俺は一度だってOKしたことはなかった。 どうでもいいやつなら、なんとでもいえる。 でも、香はどうでもいいやつなんかじゃないから。 「お前、そーいうことあんま言うな」 自分の肩から、香の手をはずす。 「なんで?彼女いないもんいいじゃん」 香が膨れっ面になる。 「彼女がいるとかいないとかの問題じゃねぇよ」 こんなところ、彩香に見られたくなくて、無意識のうちに近くにいないか探してしまう。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!