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「誰か探してる?」
キョロキョロしている俺の顔をのぞき込む。
その距離は、思ったよりも近くで。
「近ぇよ 」
フイっと、香から顔を逸らす。
「えー?なにー?いままでそんなこと言わなかったじゃん」
たしかに、香の距離が近いなんて初めてのことじゃない。
でも、明らかに俺に好意を示してきてるいまは、それを受けるわけにはいかないから。
「誰かに見られたら困るから」
彩香に見られたら困るから。
「ん?どーゆーこと?」
「俺、好きな子がいるから。その子に知られたら困るだろ」
こうして、香に言うのは初めてだ。
いままで、好きな子がいることでさえ、誰にも言ってないのだ。
まさか、それを初めて言う相手が香だとは思わなかった。
「好きな人?」
香の瞳が突如光を失ったような色になる。
「誰!?」
その直後、俺の肩をゆらゆらと揺らす。
「この学校じゃない」
彩香だと知られたら困るこら、本当のことは言わない。
「中学の子?」
「.......ん」
それは、嘘ではないけど。
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