75人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
「郁人はさ、なんも壊したくねーんだろ?」
「え?」
翼が俺を真っ直ぐ見てくるから、言葉をうまく返せない。
「彩香だろ?」
「.......え?」
翼が周りをすごく見ているやつだったことに今更気がつく。
香が俺のことを好きで、俺を見ていて、だから彩香のことを違う目で見ていたことに気づくのは当然だ。
でも、今まで誰にもバレないようにやってきた想いが翼に気づかれているなんて思ってもいなかった。
「大丈夫だよ、翔には言わねーから」
俺の頭をガシガシっと撫でる。
「お前、なんなんだよ。全部知りすぎだろ」
「なんとなーくね。見てりゃわかる。そんで、お前が関係壊したくないって思ってるのも」
翼は、香のように明るくて。
俺らのムードメーカーで。
こんなに、周りをみて考えているやつだとは、全然思ってなかった。
「あまり我慢すんなよ」
「ありがと。堪えきれなかったら言うわ」
誰か一人くらい、俺の気持ちを知っててくれる人がいてもいいかなって思った。
最初のコメントを投稿しよう!