彼の好きな人~Ayaka~

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「香?」 教室に着くと、いつも元気に登校してくるはずの香が、既に机に顔を伏せている。 「.......彩香」 顔をあげた香の目は赤くなっていて、泣いたということは明白だった。 「香、なんかあった?」 「.......なんもないよ」 力なく言葉を発して、そのまま廊下へと出ていく。 「え、待って香」 あたしは、元気のない香が気になって、そのまま追いかける。 「どうしたの?香」 廊下に出て、壁を背にして座っている香の横に腰を置く。 「帰りたい.......」 辛そうな顔をする。 「帰りたいって、どっか具合悪いの?」 香のおでこに手を当てる。 「.......郁人が」 「え?」 香の口から出た言葉に、無意識におでこから手が離れる。 「好きな人が、いるんだって」 ボロっと香の瞳から涙がこぼれ落ちる。 「.......香」 泣いている香の手をぎゅっと握りしめるけど、本当ならあたしも泣いてしまいたい。
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