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「.......泣かないで、香」
ポケットに入っているハンカチを香の手に握らせる。
「あたし、告白してないのに.......」
「.......うん」
「好きな人いるって、振られた」
どんどん出てくる涙。
「振られたわけじゃないじゃん。まだ何も言ってないんだもん」
泣いている香の背中をさする。
香を励ます言葉を言いながら、自分のことも励ます。
だって、郁人に好きな人がいるだなんて、聞いたことがなかった。
悠貴もヒロくんもそんな話1ミリたりともしてなかったから。
勝手にいないものだと思っていた。
そりゃ、高校1年の男の子。
好きな子くらいいるよね。
香は、明るい分、感情が表に出やすいから薄々郁人のことを好きなことは気づいていた。
でも、いざこうして聞くと、自分の気持ちはやっぱりずっと胸に秘めたまま、誰にも知られないままでいるべきなんだと思い知らされる。
「郁人のすきな人、わかる?」
「なんで、あたしが?」
「同じ、中学なんだって」
香の言葉にあたしの脳裏は白くなっていく。
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