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「秋月く~ん」
甘い顔立ちの秋月に観客の女性の声が上がる。
・・・・・・こんなのは、まだいい。
秋月を一目見ようと稽古先にまで押しかけられると、
黄色い声援に集中できず、稽古にならない事も度々あった。
「秋月の人気は、すげーな」
「・・・今日の公演でまた彼目当てで入部する(女)子が増えますね」
亘は、げんなりした。
「どうせすぐ辞めるだろ」
秋月に近づくことを動機に入部する女子は多い。
動機は何でも、演劇に真面目に取り組んでさえいれば、見てみぬ振りをする秋月でも、
欲望に忠実すぎるあからさまな女子部員は、冷たく突き放す。
そうして秋月に勝手に期待し、失望して辞めていく・・・その繰り返しで、
部員は俺、恭司、秋月、鈴木、北川と、他数名の裏方で、役者を任せられる女性部員は、
鈴木一人で一向に増えないままきていた。
入部してすぐ辞めるのは勝手だが、サークルに所属している数少ない女子の鈴木や北川に噛みつき、
問題を起こそうとした女子部員には流石の亘も、黙ってはいられなかった。
よくまあ芝居になってるもんだと、ステージに視線を戻すと異変が起こった。
なんだ? ステージ照明が全部揺れてる・・・??
「おい、なんか揺れてねぇか?」
「・・・・・・横に揺れてる? ・・・亘さん、これ地震だ! 深月ちゃんは!?」
「恭司、動くな! 揺れが終わるのを待て」
「でも・・・」
小さくカタカタという音から徐々にその音は大きくなり、動くのは危険だ。
「・・・・・・・ッ!!」
何かに?まっていないと揺れに流される、凄まじい力で揺れ始めた。
椅子に座っていた観客達が椅子ごと流される悲鳴、横の観客と椅子の下敷きになっている観客、
混乱、体育館の窓ガラスが割れる音。
照明やセットが揺れ動き、あちこちに落下している音がする・・・。
気が遠くなるほどの長い時間揺れは、続いた。
ようやく揺れが止まったかと思われた時、
ステージにいた鈴木が、亘と恭司に寄ってきた。
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