第二章 小学生時代

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あの一件以来、私は転校生── 十六澤が大っ嫌いになった。 今まで人を嫌いになったことなんてなかった私にとって、生まれて初めて出来た嫌いな人間だ。 嫌いな人間とはなるべく顔を合わせなければいい。 話だってしなければ嫌な気持ちになることもない。 しかし家が近所のせいで意外と顔を合わせることが多かった。おまけに同じクラスだから接する機会はとても多かった。 加えて── 「なぁ、算数の宿題、見せて」 「えっ、またやってこなかったの? ちゃんと自分でやらなきゃ身につかないよ」 「そんなこと分かってる。いいから見せろよ」 「仕方がないなぁ。……次はちゃんと自分でやるんだよ」 「やる気になったらな」 (いつの間にか陽生ちゃんと仲良くなってる!) 隣同士の席効果なのか、陽生ちゃんと十六澤はいつの間にか仲の良さが窺える関係になっていた。 (これじゃあ私が陽生ちゃんに近づけないじゃない!) ただでさえ忙しい陽生ちゃんとはすれ違ってばかりいる。 (くぅぅ~十六澤朔めぇぇー益々嫌な奴!!) 「ねぇ、最近あのふたり仲がいいねぇ」 「……有紗」 怒りに震えている私の元に有紗がヘラッとした顔をしてやって来た。 「流石小路くんだよね。問題児の十六澤くんまで手懐けちゃうなんて」 「何よ、その猛獣使い的扱い」 「だってぇ、なんか怖くない? 十六澤くんって」 「……それは」 (怖いと思っていたの、私だけじゃないんだ)
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