第三章 中学生時代

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(そ、そっか…。もし朔と結婚、したら……) そんなことを考えたら朔につられて私まで顔が赤くなった気がした。 「はぁ~でも本当安心したわぁ。朔くんの彼女がこんなに可愛くてしっかりした娘さんで」 「いえ。しっかりとはしていなかと」 「どうか朔をよろしくお願いします」 「!」 急にお母さんが真剣な声でそういって私に頭を下げたから驚いてしまった。 「朔はわたしの大切な息子です。──ですから……」 「あ……は、はい」 突然のことだったので気の利いた返しが出来なくて申し訳ないなと思った。 「あぁ! あんたはもう、何いってんだよ、本当にっ」 朔は物凄く嫌そうな顔をしながらも何処か嬉しそうな感じが見て取れたのだった。 「お母さん、いい人だね」 「……はぁ。時々抜けてることいったりするけどな」 朔の家を出て私は帰路に着いた。 すぐ近所だからひとりで帰れるといったのに朔は送るといってきかなかった。 (……それにしても) 結果として行為には至らなかったことに残念な気持ちとホッとした気持ち、そのふたつが入り乱れていた。 「紅実」 「ん?」 不意に名前を呼ばれ視線を合わせる。少し朔の瞳が揺れていた。 「……今日は……ああいうことになったけど……その、また今度……」 「……」 「今度こそ紅実を……俺に頂戴」 少しだけ不安に揺れている朔の瞳を見ながら私は安心させるように告げた。 「……うん。私にも朔を、頂戴」 「っ!」 そう口にした瞬間の朔の嬉しそうな表情を私は決して忘れることはないだろうと思った。
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