第三章 中学生時代

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「きっと卒業式はすっごいことになりそうだね」 「どうして?」 「だってきっと女子が陽生ちゃんの制服のボタン欲しさに群がると思うもん」 「制服のボタン? そんなの欲しいの?」 「欲しいんだって! 女子にとっては卒業式にもらいたい記念品、永遠の第一位!」 「へぇ……そうなのか。でもボタンは5個しかないから5人にしかあげられないな」 「もうー! 違うよ。みんなは第二ボタンが欲しいの」 「え、第二ボタン限定で欲しいの?」 「そうそう」 こういう俗っぽいことには疎い陽生ちゃんに卒業式・第二ボタンのキーワードで蘊蓄(うんちく)を垂れた私だった。 「へぇ、そうなんだね。だったら朔も大変なんじゃない?」 「は? なんで俺」 「だって朔だってモテているじゃない」 「え」 陽生ちゃんの言葉にドキッとした。 「ほら、何度もラブレター貰っていたじゃない。ちゃんと返事、したの?」 「ちょ…陽生、こんなとことで話すことじゃないだろう」 「……」 (ラブレター……モテる……) 朔がそういう対象になっていることなんて全然知らなかったから今訊いてちょっと驚いている。 (確かに朔は背が高いし顔も陽生ちゃんの次にカッコいいしスポーツも出来るし……) 女子受けする要素は満点だったけれど面と向かって朔がモテているところを私は見たことがなかった。だから全然知らなかったのだ。 「もしかして紅実は知らなかったの? まぁ興味のないことにはとことん興味なさそうだよね、紅実は」 「……はは、うん……そう」 陽生ちゃんの言葉がスルッと頭の中を通り抜けて行く。 チラッと見た朔の顔は少し曇っているように見えた。
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