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「じゃあね。今日はありがとう」
「うん。気を付けてね、陽生ちゃん」
「大丈夫だよ。あ、朔。ちゃんと紅実を家まで送って行くんだよ」
「心配しなくても同じ方角なんだから送るよ。いいからとっとと行け」
「ははっ。またね」
ファミレスで3時間ほど過ごして店を出ると、陽生ちゃんは新幹線のチケットを買いに行くといって駅前の方に向かって歩いて行った。
私は例の如くピアノ教室があったから一緒には行けなかった。
「あーあ……。最後までタイミングが合わないなぁ」
「陽生と一緒に行きたかったのか」
「ううん。どうせなら三人で帰りたかったなって思って」
私がそういうと朔はちょっと嫌な顔をした。
「それって俺とふたりではつまらないってこと?」
「違うよ。そういう意味でいったんじゃないよ。ただ……朔とはずっとずっと一緒に帰れるけど、陽生ちゃんとはこういう機会ってもうないんじゃないかなって思ったら……」
「……」
「ん?」
「……そういうことか」
朔の顔を見上げると少しバツが悪そうな顔をしていた。
「ひょっとして妬いちゃった?」
「……」
「だったらおあいこだよ」
「え」
「だって……私だって妬いているんだから」
「何に」
「先刻、陽生ちゃんがいっていたこと」
「……」
何か思い当ったのか朔は益々バツが悪そうな顔をした。
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