第三章 中学生時代

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「私、知らなかった。朔がラブレター貰うほどにモテるなんて」 「そ、れは……」 「本当なんだね」 「……あぁ」 「ひょっとして直接告白されたこともあるの?」 「………ある」 「……」 (嘘、つかないんだよね。本当) 朔の性格を知っているから朔から出た言葉は基本信じている。 「なんで黙っていたの? それって私に隠していたってことだよね」 「……要らぬ心配させたくなかった」 「え」 「俺、紅実以外の女に興味ないから告白とかラブレターとかもらってもその場で断っていた。だからそういうの、わざわざ紅実にいうことじゃないと思った」 「……」 「だから黙っていた……んだけど……ごめん」 「……もう」 (無意識なのかな) 朔から飛び出す言葉はこんな時まで私を喜ばせる。 『紅実以外の女に興味ない』──その言葉だけで燻っていた苦い気持ちが一気に晴れてしまった。 「紅実?」 「もういい。許す」 「本当? よかった」 心から安堵したって顔をした朔が可愛いくてまたドキッとさせられた。 (惚れた弱味かな…。朔のこと、怒れない) そんなことを思いながらそっと朔の手を取った。 「ん」 「手……繋いでもいい?」 「もう繋いでいるじゃないか」 そういいながら朔は私の指に自身の指を絡めた。 (あ……恋人繋ぎ) 絡めてくれたことが嬉しくて自然と頬が緩む。 自宅までの道のりがあっという間に感じられる。 (もっと……もっとずっと繋いでいたいなぁ) 自分の体の一部が好きな人と繋がっているということだけで私は幸せの絶頂にいたのだった。
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