第四章 社会人時代

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「ねぇねぇ、くみちゃんとおにいちゃん、いつけっこんするのぉ?」 「ぶっ」 思わず口に含んでいた紅茶を噴き出してしまった。 「あらまぁ、月子ったら。何おませなことをいっているの?」 「だってぇママ。つきこ、はやくくみちゃんのいもうとになりたいのぉ」 「あぁ、そうね。それはママも一緒の気持ちよ? 早く紅実ちゃんがわたしの娘になってくれればいいのになぁって思っているわよ」 「こら、おまえたち。そういうことは本人同士の気持ちの問題だろう。外野が騒いではまとまるものもまとまらん」 とある休日──月子ちゃんの顔を見に十六澤家に来ていた私はいつも通り在宅中の朔のお父さん、お母さん、月子ちゃんの三人から露骨な口撃を受けていた。 「そうはいうけれどね、どうしたってヤキモキしちゃうんです。だって中学の時から一筋にお付き合いして来たふたりですよ? 早く幸せになってもらいたいと思うのが親心というものですよ」 「おまえの気持ちは分かる。おれだって早く孫の顔が見たい」 「ぶっ」 お父さんの意外な言葉にまた飲んでいた紅茶を噴き出してしまった。 (はははっ……朔がこの場にいなくてよかった) 朔はお母さんに頼まれたお使いに出掛けていて今、この場にはいなかった。
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