第四章 社会人時代

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多分、お母さんたちが朔には訊かれたくない話を私にするのだろうと思っていたけれど…… (まぁ……朔に対して露骨に結婚の話は出来ないんだろうな) 私以上に朔の性格を知っているだろう十六澤家のことだから分からないことでもない。 「で? 今はどんな感じなの?」 「……えぇっと」 お母さんにズイッと顔を覗き込まれ少し怯んでしまった。 (どんな感じといわれても……) 「父親のおれがいうのもなんだが、朔は人一倍結婚願望の強い男じゃないのかな」 「確かに……強い、ですね」 「わたしたちもふたりの結婚に関しては何の反対もないのよ? それどころか学生結婚だってしてくれていいとも思っていたくらいですもの」 「そ、それはいくら何でも早過ぎでは──」 「そんなことないわよ。ねぇ、あなた」 「そうだな……。まぁ、経済的なことを考えれば学生結婚は大変かも知れないが反対する理由は特になかった」 「……」 (なんだかこうまで結婚に対して寛大なところを見せられるとちょっと考えちゃうな) 実は朔からは大学卒業の時にプロポーズされていた。 それ自体は私にとっても嬉しいことだった。だけど私はそれを直ぐに受け入れることが出来なかった。 勿論結婚するのが嫌とか、朔のことがどうのこうのとかではなく…… (単に私の我がまま……なんだよね) プロポーズの返事を保留にしている負い目はじわじわと私を苦しめていたのだった。
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