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声がした方に視線を送ると其処には買物袋を手にした朔が憮然とした表情で立っていた。
「さ、朔」
「ったく…。俺のいない処でそういうこと話すなよ」
「あの……ごめん」
「……いいけど。──これ、頼まれていた物、買って来たから」
「ありがとう、朔くん」
(どうしよう、朔に訊かれていた)
出来れば知られたくなかった不甲斐ない悩みを、朔のいない処で話していたのがとても悪いことのように思えた。
買物袋をキッチンカウンターに置くと朔は私の隣に腰掛けた。
「んで、なんだって」
「え」
「話の続き、俺にも訊かせろよ」
「……あの」
「俺さ、気が付いていたよ。紅実が何か悩んでいるってこと」
「え」
「分かるってーの。どんだけ付き合っていると思ってるの」
「……」
「でもいつか話してくれるんだろうなって待っていたのに…。なんだよ、俺よりも先に家族に話すとかって」
「ごめん……ごめんな、さい」
「別に怒ってはいないから」
「……」
「おまえ、昔からそうだよな」
「え」
「何でもかんでも自分ひとりで悩んでひとりで解決しようとするところ、あるよな」
「……」
「それで後になってからすっごく後悔する」
「……」
「知ってるんだよ、全部」
「……朔」
薄っすら目頭が痛み涙が出ると思った。
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